家庭の事情

エッセイ

スリッパ

家庭というものは男のベースキャンプであり、心の拠り所となっている。
家庭というものをかえりみず、その挙句に家庭が崩壊してしまった男の末路はつらい。
生きがいをなくし、目から光が消え、寂しさから夜の街を彷徨し、散財に次ぐ散財、たどり着いた先で出会った行きずりの女を抱き、その女に騙されて人間不信になり、最終的には自我を失い狂って自分の糞尿にまみれるだろう。

私は家庭について日々考え、それを失ったときの顛末をシミュレーションすることに大きなエネルギーを割いている。
だから失わないように細心の注意を払っている。

先週の飲み会の誘いは、家庭の事情で断った。
きのこ狩りの誘いも、家庭の事情で断った。
鳥人間コンテスト出場のオファーも家庭の事情で断ったし、小包を二週間保管しておくだけで大金がもらえるという仕事の依頼も、家庭の事情で断った。

先日、「近所の小川にニジマス釣りに行かないか」という、家庭の平和を脅かしかねない危険な申し出があったので、いつものように家庭の事情で断った。
すると、誘ってきた男が「家庭の事情ってなんなんですか」と食い下がってきた。
こういう男は、一生かかっても家庭に平和をもたらすことができないだろう。
「事情」は「事情」であり、それ以上でもそれ以下でもない、ということをまるで理解できていない。
「事情」の内訳を知ろうと考えるのは、たとえば「接待費」「営業経費」の内実を探るのと同じくらい無意味だ。
知って何になるというのか。
家庭は、「事情」をはじめ、「愛」「計画」「老後」など、あいまいで、かつ耳ざわりの良い言葉のうわべをなでることにより成り立っているのであって、それらをひとつずつ深く掘り下げるのは、きわめて危険な行為である。

このように、あらゆる誘いを家庭の事情により断ることによって、私は家庭を守り、そして自分を守ってきた。
夜の街で散財することもないし、行きずりの女に騙されることもない。

今後も、「島耕作」を何度も読むこと、相席居酒屋に行くこと、残業、放屁、昼寝など、家庭にとって有害なものを積極的に拒み、家庭を守り続けていきたいと思う。

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