ある父の日の思い出。

エッセイ

木村です。

もうすぐ父の日だそうです。

母の日に比べると地味な印象もありますが皆さんは父の日に何かされたりするのでしょうか?

私には忘れられない父の日があります。

それは私が20代前半の頃です。

当時私は新潟市の内野に住み近所のパチンコ店で働いておりました。

パチンコ店と言っても最近のお店の様な大型でひっきりなしに人が入っていくようなお店ではなく

来るお客さんも多い日で20人ほど、それも近所のおじいちゃんやおばあちゃん、畳屋さんや石屋さんなど顔見知りばかりで

店員もお客さんも全員が名前も知っている知り合い同士という超アットホームなお店でした。

今は無くなってしまったのですがそれはそれは大変素敵な空間だったと思っております。

そんなお店である年の父の日に常連さんにプレゼントをすることになりました。

プレゼントと言ってもそんなに大層な物は渡せないのでみんなで意見を出し合った結果

入浴剤の「バブ」をプレゼントすることになりました。

バブから始まるストーリー

バブから始まるストーリー


本日のブログはそんなある日の物語です。ヒグチは当然出てきませんので

ヒグチにプレゼントを考えていらっしゃる方は「ひょっとこ日記」にご移動をお願い致します。

1:バブを配る

迎えた当日はいつにも増してお店は賑わっておりましたが

普通のパチンコ店に比べれば遥かに少ないお客さんですので

営業中のお昼過ぎに女性スタッフから一人一人に個包装されたバブ(2個セット)を配り始めました。

普段は軽口を叩きあっている常連さん達も予想外のプレゼントに表情をゆるめ喜んでくれました。

10分程度で全員に配り終わり、ホールも落ち着きを取り戻したので

私は事務所に戻って一服をすることにしました。

誰かに喜ばれるというのはどんな形であれ非常に気持ちの良いものですから

店員同士も穏やかな気持ちで談笑していたのを覚えています。

そんな矢先店員のW君が事務所に飛び込んできました。

みんなが振り返ると顔が青ざめています。

「どうした?」と聞いた瞬間、彼は衝撃的な言葉を口にしたのです。

大変です。吉田さんがバブ食べてます。

ochoushi

吉田さん、バブを食べる。

吉田さん(仮名)とは毎日来るお店の常連さんで当時でも80才はゆうに超えていらっしゃったと思います。

色が褪せた青いキャップに

タバコのヤニで黄色く変色した丸メガネをかけ

無精ひげに薄緑のジャンパーを着ておられました。

吉田さんは毎日決まった台に座り朝から黙々とパチンコを楽しまれていたのですが

夕方近くになると決まってハンドルを持ったまま寝てしまうようなお茶目なおじいちゃんでした。

咥えたタバコが根元まで灰になりポロッとおちてもお構いなしに眠り

限界が来た頃にフラフラと自転車で帰っていく。そんな吉田さんがバブを食べた

事務所内は騒然となりました。

店長に状況確認を命じられた私は急いでホールに向かいます。

いつもの台に陣取る吉田さんに近づくと不意にラベンダーの香りが充満していることに気が付きました。

目をつぶれば富良野の大地にいるのではと錯覚するほどの芳醇な香りです。

これで誰かがラベンダーのバブを開封したところまでは確定しました。

問題は吉田さんが実際に食べてしまったのかどうかです、恐る恐る後ろを通るとそこにはバブの影も形もありません。

「もしかして開けただけでたべてないんじゃないか…」

私の心中に淡い期待が浮かびます。

するとその時W君が耳元でこう囁いてきたのです。

木村さん、吉田さんの吸い殻入れ見てください。」

そう言われ何気なく吸い殻入れを見た私は愕然としました。

吉田さんの吸い殻入れにあるタバコのフィルター(吸い口)がすべて紫色になっているのです。

バブが吉田さんの体内に。

バブが吉田さんの体内に。

私は吉田さんに問いかけます。

「吉田さん、バブ食べました?」

…ん?…ああ…うぅ。

基本的に吉田さんは何を聞いても「あぁ」か「うぅ」がデフォルトなので

これが肯定の「あぁ」なのか否定の「あぁ」なのか苦しんでいる「あぁ」なのかは長い付き合いの私にも判断が付きかねます。

しかし状況証拠的に吉田さんの体内にバブがあることは疑いようのない事実なのです。

吉田さんがラベンダーのバブを食べた。

どうやら間違いがないということに気が付いた私は慌てて事務所に戻り店長に報告した後パソコンに向かいました。

今と変わらず検索が得意な私ですからGoogleに「おじいちゃん バブ 食べちゃった ラベンダー」と打ち込みます。

すると出るわ出るわの事例の数々。

どうやら全国各地で入浴剤を誤飲するという事故は起きているようです。

対策方法としてはとにかく水を飲ませて様子を伺うというのが基本の様なので

急いで水を買い与え様子を見ることにしました。

タクシーで帰ってもらうという選択肢もありましたが

一人暮らしの吉田さんが自宅で急変してしまう最悪のケースを考えての判断でした。

幸せだった空間は一転、スタッフと吉田さんだけが知る緊張感のあるホールに変わっていたのです。

この日ばかりは私も終日吉田さんの動向を見守る為ホールに出ることになりました。

吉田さん、覚醒。

夕方を迎えるころホールは一段と活況になりました。

本当に稀にみる大混雑です。

しかしそんな喧騒のホールで私の視線は吉田さんの一点に注がれ続けていました。

バブを食べて3時間ほど。いつ異変が起きてもおかしくはない時間が続きます。

「吉田さん、無事でいてくれ」

そんな願いが通じたのかその後もなんら異変を感じさせずにパチンコを楽しむ吉田さん。

やはり入浴剤を食べたくらいじゃ危険なわけないんだなぁ

と、ちょっぴり安心し始めた矢先ふとある事に気が付きました。

吉田さんが寝ていない。

そうです、毎日夕方くらいにはハンドルを掴んだまま眠りに落ちる吉田さんが

本日はどういうわけか背筋をしゃんと伸ばしパチンコを打ち続けているのです。

どういうことだ…。心配をよそに吉田さんのパチンコは続きます。

気が付けば夜の19時を回り普段ならばとっくに帰宅している時間を過ぎておりました。

吉田さんはバブの炭酸と血行促進作用の影響で覚醒したのです。

私は胸が熱くなりました。

いつも眠くなり仕方なく帰っていた吉田さんに大好きなパチンコを心行くまで楽しんでもらえた。

バブは本来の使い方ではないにせよ、吉田さんに最高の父の日を送ってくれたんだ。

思わず目頭が熱くなるのを抑えながら、帰る為のランプを押した吉田さんのもとへ向かいます。

吉田さん本日は大勝です。

球を計数している間吉田さんに話しかけます

「今日は眠くならなかったんですか?まさかバブの効果だったりしますかねぇ?」

すると吉田さんは穏やかな口調でこう言ったのです。

「ん?あぁ…うぅ。」

次回は父の日のプレゼントを探しに沼垂を歩きます。

あなたのビジネスのWeb戦略を、ぜひキタックにおまかせください。

効果を出すためのサイト運営、集客できるウェブ広告

ブログの更新情報をお知らせしています。