人生で大切なことは全部マッサージが教えてくれる。

エッセイ

なんでもない日のなんでもない話。

ある日、知人と二人でマッサージにでかけた。

60分2980円みたいな街によくあるやつだ。

 

 

店内にはマッサージ用のベッドが20台ほど並んでいたが、先客は1人のみ。

すぐにやってもらえるということだったのでお願いすることにした。

 

 

アンケートのようなものを記入しながら待っていると、担当が来た。

一人は金太郎だか桃太郎だかといった名前。50歳前後の男性。

もう一人は全く記憶に残らない、よくある感じの名前(仮に石川とする)。30歳前後。

壁に貼ってある店内指名ランキングでは2、3位の強豪である。

桃太郎さんは2位。

 

私の担当は指名ランキング3位の石川になった。

アンダーアーマーの黒Tシャツを着ていていかにもやりそうな青年だ。

 

 

奥の物置のような更衣室で全盛期の志茂田景樹を髣髴とさせるカラフルなルームウェアに着替えてベッドに横たわった。

「どこか痛い所はございますか?」

はっきりと聞き取りやすい口調で石川は言う。

仕事柄歩く距離が多いので足と腰を中心にお願いすることにした。

 

おなしゃーす。

「それでは開始しまーす。」といってストップウォッチを押しスタート。

斜め前では桃太郎の施術もスタートしていた。

 

 

そんなに疲れている気もしていなかったが、ゆったりとしたBGMと昼食にとったアルコールの影響もあってか

眠気と心地よさにうつらうつらとしていると、斜め前の桃太郎チームでは「おおぅ」や「あはぁ、いってぇ…」といった声が漏れてきた。

なるほど、桃太郎のマッサージスタイルはストレッチのような伸ばしたり押したりのストロングスタイルのようだ。

疲れているときにはストロングスタイルで一気に解消したいところだが、当日の私はそこまでではない。

担当石川のこねくり回すようなスタイルがぴったりだった。

ストロングスタイルが好きな日もある。

 

開始からどれほど経ったのだろう、肌感覚では10分は経過していたが石川の手が私の右おしりから離れる様子はない。

「足と腰を。」といった私の言葉を石川は「あの、おしりを。」と聞き間違えたのかもしれない。

とはいえ石川も店内3位の実力者。

ここは委ねてみようじゃないかと決意を新たにした。20分は経ったであろうその時も右のおしりを揉まれていた。

 

 

途中のアラームが鳴って30分経過。皆さんはおしりの片方だけを30分揉まれた事がおありだろうか?

揉まれた事がない方にお教えしよう。おしりは30分揉まれると信じられないくらい熱を持つ。

左と右の温度差をハッキリと感じれるようになる。

右に豚肉の薄切りを置いて、火が通ったあとに左に置けば冷しゃぶになるくらいの温度差といえば分かるだろうか。

それくらい違うのである。

このままでは右のおしりから火が出るのではないかと心配になった矢先、石川の手は左のおしりに移行した。

おしりが美味い肉だったらよかったのに。

 

 

 

50分。当然左のおしりを揉まれ続けている。

ふと顔を上げ、前方のベッドに目を向ければ桃太郎はキャメルクラッチのような体勢で側腹部を伸ばしていた。

私が左右のおしりを揉まれ続けている間にあちらではどんなマッサージが行われていたのであろうか?

私がおしり冷しゃぶを作っている間に桃太郎チームでは全身のコリがほぐれいていったのかと思うと悔しくなる。

おいしそうなお肉の画像でお楽しみください。

 

桃太郎チームはベッドから起き上がり、フィニッシュが近いことを思わせる。

おしり冷しゃぶチームに属する私は未だにベッドに横たわり、左を揉まれ続けている。

そろそろ左からも火が出そうだ。

ウルフギャングのステーキ。

 

「ピピピピッ」とアラームが終了を告げた。

60分を通じて私は本当に左右のおしりを揉まれつづけたし、石川は揉み続けた。

そこにあったのは揉んだ男と揉まれた男がいる。その事実だけだ。

 

 

メガネをかけ、石川に目をやるとほんのりと紅潮した顔からは満足そうな笑顔が見える。

「だいぶコリがとれました。あと少し時間があれば完璧でしたよ。

石川は言った。

 

 

私はベッドを起き上がり物置の更衣室に入った。

借り物の短パンから着替える際、私はハッとした。

信じられないくらいに足腰が軽いのである。

それは魔法にかかったかのような出来事であった。

若干感じていたハリのようなものが無くなっているのはもちろん、足を上げる動作が明らかにスムーズに行えるのだ。

たぶんケインコスギとかは毎日こんな感じなのだろう。

 

 

会計を済ませ出口まで見送ってくれた石川にお礼を言うと、にこやかな笑顔でこう言った。

おしり触ってみました?ふふふ

私は意味が分からず自分のおしりに手をやった。

すると何ということだろう、おしりがおぼろ豆腐のようにフワッフワになっていたのだ。

フワフワではなくフワッフワ。

マシュマロよりも更にやわらかく、大切に扱わなければ崩れてしまいそう。そんな感触だった。

施術中、おしりを揉み続ける石川を疑った自分を恥じ、

プロの凄さへの驚きと感動、人を信じる気持ちの大切さを学んだ私は

軽くなった足取りで帰路についた。

 

 

次回からは桃太郎にお願いしようと思う。

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