第35節「エース」
ツエーゲン金沢のホーム石川県西部緑地公園陸上競技場は、どこかのんびりした空気がある。画面越しだけど、なんか伝わる。
今日は2,800人入った。新潟からも、おとなり富山県を飛び越えて、けっこう行ったらしい。
3連休初日のお昼、ほのぼのしつつ、行楽も楽しみながらの日本海対決。サッカーはピッチの上でバチバチやるだけじゃなくて、休日を彩るリラックスの種としても拡がっていってほしい。
磨かれてる、柳下監督のチーム
昇格には相当厳しい状況になった。でも残りの試合を選手は一つずつ全力でやる。ファンはワンプレーワンプレー噛みしめるように堪能する。今シーズンのJ2も残り8試合。一つでも上へ。
アウェーに乗り込んだアルビは、いつもの4-2-3-1でスタート。
GKは好調の藤田。DF右から田上、マウロ、舞行龍、キャプテン堀米。ダブルボランチに島田と中島。このセットのときは割とタテ関係になる。島田が後ろで中島が前。右ワイドに大本、左に本間至恩。トップ下高木。1トップ鄭大世。
金沢は「ヤンツー」さんこと柳下正明監督のチーム。4-4-2の3ラインで、前線から後ろまでギュッと詰めてコンパクトな陣形を保持し、マンツーマン気味で相手選手をみる。球際は激しい。攻撃は主にショートカウンターとサイド攻撃。選手全員がよく磨かれていて、チームで共有できていることが多い。そのため攻めも守りも連動して動ける。見てて好感が持てるチームである。
新潟がボールを持って、金沢が狙う、という展開。アルビのボール保持率は高いけど、決してアルビペースではない。前半はどちらかというと金沢のほうがやりたいことをやれてた印象。中盤の4枚とDFラインの4枚が整備されててアルビは攻撃しづらそう。今日の金沢は奪ってからのカウンターが鋭い。決定的なチャンスは金沢のほうが多かったような気がする。
アルベルト監督のゲーム読む力やっぱすごい
アルビにとっては、なんだかモヤモヤする試合展開だったかもしれない。ボールは持ててるんだけどいい形でバイタルエリアに運べていない。
ただ、この日は10番本間至恩にキレがあった。エースの風格。ドリブルのキレはもちろん、人を使う判断、ゴールへの意欲、ボールへの執着。とても頼もしい。
後半、アルビは中島と高木の位置を入れ替える。中島をトップ下に、高木はボランチの位置に。ここに入っても高木は確かに充分活きる。あいだあいだに顔を出し、受け、シンプルにさばく。リズムをもたらした。
中島は後ろを気にしないほうが、より前への推進力を出しやすい。
この辺の選手の使い方、流れを見ながらのポジションチェンジは、「アルベルト監督さすが」といつも思う。
後半少しずつリズムがでてきて、本間至恩の勢いも増し、アルビはペースを握り返した感じ。
そして鄭大世の「らしい」ゴール。強靭なフィジカルで相手DFを吹き飛ばし、左足一閃。これぞ鄭大世。これまたエースの貫禄。
同点にされたあと、すぐに取り返せたのが良かった。この二点目、堀米のシュートも落ち着いていたが、アシストした本間至恩の右サイドの突破は見事。
一点目も二点目も、個の力が生んだゴール。本間と鄭大世は新しい2大エース。でもその個を、相手にとって危険なエリアでたくさん発揮するために、ゲームを組み立てる必要がある。後半のアルビはそれができていて、二点につながった、と考えることにする。
後半のリズムを作ったのは、先述したようなアルベルト監督のテコ入れによるところが大きかった。高木と中島の入れ替えもそうだし、先制したあとの、早川&矢村のINもそう。先制ゴールの鄭大世をここで替える勇気、早川をSBに入れて堀米を上げる発想(そしてその堀米が決勝ゴール)。
残り試合が少なくなってきて、ちょっと寂しくなってきた。でも、チームの完成度は高まっているし、戻ってきた秋山裕紀とか、見たい選手もまだまだいるし、それに今シーズンのアルビがどういう終わり方をするのかとか、楽しみはたくさん。シーズンが終わりに近づいてるこのヒリヒリ感も、また一興なのである。
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