第8節「守りから入る」
分かってたことだけどハイペースで試合がやってくる。
観てる方はありがたいけど、やってる方はたいへんだろう。
とうぜん疲れもたまるし、反省して考えて改善するヒマもなく、すぐに次の試合がやってくる。
そんな中でも、アルビは毎試合ごとにテーマをもって、選手も布陣も戦術も変え、いろいろ模索しながら筋道立てて進んでいるように感じる。
第8節の相手は東京ヴェルディ。
Jリーグ創成期に一斉を風靡した、あのクラブだ。
カズ、ラモス、北澤、柱谷、都並、武田、ペレイラ、菊池新吉、石川康、ビスマルク…
元祖スター軍団。
そして令和の時代、2020シーズンのヴェルディの監督は、永井秀樹である。
紛れもなく当時のスター軍団の一角を担っていた中盤の核弾頭。
風貌は全然変わっていない。いや、ギラギラした感じが抜けたところに知性が漂っていて、よりかっこよくなってる。手強そうだ。
ボール持ちたい合戦
永井監督率いるヴェルディは、今季のJ2でポゼッション率No.1なんだそうだ。
アルビも知っての通り今年はボールを大事にする、というコンセプトでやってる。
どっちがボールをより持てるか、が、このゲームのポイントになりそうだ。
と思ってみてたら、前半のアルビは、どちらかというと守りから入った印象があった。
相手の特長を消すこと、こちらが好きなことをするのではなく、相手に好きなことをさせないこと、を優先しているような。
具体的には、戦士ロメロ・フランクをトップ下に置いて、ヴェルディのポゼッションのキーマン、アンカーの藤田譲瑠チマをマンマーク気味にみさせたこと。
その前のワントップには、前線から献身的に守備をする渡邉新太を置いて、DFラインでのボール回しを追わせる。
あと、4バックの右に田上を入れた。殴り合いにいくのならここはドリブラーの大本という選択肢もあったと思うが、これはヴェルディの左サイド攻撃を警戒してのことなのか。
ともかく、アルベルト監督はこういう手ももってるのか、と感心した。
ふわっと入るのではなく、試合ごとにテーマを与え、選手たちがやることを明確にしてくれる監督だ。
この試合でいうと、ボール保持にそれほどこだわらず、適材適所の配置で守備を構築し、相手の良さを消すということ。
サイドハーフに、絶好調の本間至恩と、古巣ヴェルディ相手でモチベーションが高まらないはずがない高木をきちんと起用しているあたりも心ニクい。
攻撃面は、高木のパスと本間のドリブルというこの特性を尊重しつつ、ボールを奪ったらすかさずロメロ・フランクと渡邉新太がスペースに飛び出すというショートカウンター狙いのように見えた。
ヴェルディもさすがポゼッションNo.1のチームだけあって、面白いサッカーを展開する。ロメロにつかれたアンカーの藤田も、位置取りとかワンタッチのさばき方とか、若いのにすごくクレバーな気品が漂ってた。
アルビの狙いもある程度奏功し、前半は0-0で折り返し。
よく追いついたよね
後半、両監督が少しずつゲームを動かす。
始まって5分くらいしてから、アルビは3枚替え。
ロメロフランクOUT→ファビオIN。
高木OUT→シルビーニョIN。
本間OUT→島田IN。
ファビオINは想定できるが、この試合でアンカーを消しつつショートカウンターの起点になるという重要な役割を担っていたロメロ・フランクでなく渡邉新太を残した。新太はここのところ、出ずっぱりじゃないか。タフだ。
あと、初スタメンのボランチ中島を、SHに上げる。今日の中島は少しダイナミックさがなく、タテにつけるパスも少なかった気がしたが、前に出て、大胆にゴールに向かう感じとかが少し垣間見えた。
ヴェルディも人と布陣を大胆に変えた。
左右のウィングを高い位置で張らせ、CFの場所はあえて配置せず、色んな人を飛び込ませるイメージ。
舞行龍ジェームズ、マウロの屈強なCBと真正面から勝負せず、スピードとアジリティでゴールを狙うような。
永井秀樹監督が選手としてピッチにいたら、大好物の戦術かもしれない。
あとヴェルディの左WGに入った選手がものすごいスピードスターで、右で奮闘してたCBタイプの田上とのミスマッチを狙いにいってた感もある。
アルビは後半、どちらかというと押されてた。ヴェルディの作戦の方がハマりがよかった。
それで結果的にセットプレーでやられる。
あ〜、と思ったが、最後の最後で、ロングスローからアルビも取り返した。
ロングスロー、ニアでマウロが目一杯体を伸ばして頭でそらし、渡邉新太が丁寧なインサイドでゴールに流し込む。
1-1。
こういう試合でドローに持ち込めた、しかも終盤に追いついたのは好材料じゃないか。
それにしてもチェスのような、両軍いろいろ配置を変えながら、攻め方守り方を組み立てていくこの試合はとても見応えがあったです。
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