第26節「点を取る型」
引いて守る相模原に対して苦しみましたが、先制された後すぐに取り返したのが良かったですよね。右のクロスから点を取る型ができたのは、今後の好材料。強力なバリエーションになりました。それでは試合前の状況整理、ダイジェストをどうぞ。
試合前の状況
- デンカビッグスワンスタジアム(新潟ホーム)、18:00キックオフ
- 3位新潟 vs 21位相模原
- 新潟は3試合連続引き分け中
- 相模原は前節最下位を脱出
試合ダイジェスト
【前半】
立ち上がりからしばらくは明確な意思統一がなされていた相模原が優勢。攻守の切り替えが早くはっきりしている。藤本淳吾の華麗なループシュートで先制された直後、右のクロスからこぼれ球を福田が決めて同点に追いつく。1-1で折り返し。
【後半】
主導権を握り始める新潟。相模原は自陣に引いてブロックを敷いて守る。新潟は押し込んだ状態でクロスを入れる形を再三作る。その形から、谷口の逆転ゴールが生まれる。その後追加点は奪えないものの、相模原の反撃を許さず、新潟が2-1で勝ち切った。
狙いをハメ合う
アルビの前節千葉戦は、おそらく不本意なゲームだったろう。ゲームもボールも支配できず、それでもなんとか勝点1を持って帰った。
前節のよくないイメージを、ホームで払拭したいこの一戦。昨日首位磐田も勝った。これ以上離されたくない。
「心機一転」という意味なのか、アルビはメンバーをけっこう変えてきた。
GK藤田和輝。DF藤原奏哉、千葉和彦、舞行龍ジェームズ、堀米悠斗。MF高宇洋、福田晃斗、星雄次、高木善朗、谷口海斗。FW高澤優也。
藤田と高澤は今季初先発、星も久しぶり。ベンチに鈴木孝司や島田が見当たらず、三戸や大本、ゴンサロが入っている。ちょっとショック療法的な意味合いもあるのかもしれない。
対する相模原は、チームの低迷を受けて6月から高木琢也監督が就任している。東京V、長崎、大宮などで辣腕を振るってきている実績充分な、元・アジアの大砲である。
スペイン型のポジショナル・フットボールを標榜するアルビに対して、明確な意図を持った戦術をとってきた。
攻撃時は3-4-2-1の布陣。基本的には1トップ2シャドーであまりリスクをとらずに攻める。シャドーの一角に入った藤本淳吾と19歳ボランチ成岡輝瑠がボール回しにアクセントをつける。二人が絡むと面白い攻撃になる。
序盤は、ややスローペースな展開で、相模原がボールを持つ時間も多く見られた。なんだか前節のジェフ千葉戦と似てるな…と、いやな空気が漂う。
相模原のやり方がもっと明確なのは守備時。新潟がボールを持つと、1トップもぐっとラインを下げてハーフウェーラインより下に。で、両ワイドが引いて5バック、2シャドーも引いて中盤4枚。5-4-1での撤退戦。自陣でかなりコンパクトなブロックが形成される。
これにアルビは手を焼いた。相模原の守備時の意思統一が強固だし、スペースが全然ないので、入り込んでいけない。うかつなボール回しをすると、奪われた途端、がっとカウンターが来る。
なにしろ相模原がかなり引いてるので、千葉と舞行龍の両CBの背後には広大なスペースがある。ここを相模原は常に狙っている。
飲水タイム明け、相模原の先制ゴールは、うーん、狙いをハメられてしまった。
中央でボールを受けた成岡の、ちょっと浮かしてタイミングをずらしたスルーパス。GKとDFの間に落とす感じのあのパスはセンスのカタマリ感がある。いい選手だ。
で、それに反応したFW澤上がGKと一緒につぶれ、こぼれ球を繋がれて中央で待つ藤本淳吾へ。藤本がこれまた極上のセンスを見せてくれて、ちょうどいい強さのループシュート。必死に戻った舞行龍の頭をかすめてゴールに吸い込まれた。
自陣でコンパクトに守ってアルビ陣内にスペースを作り、個の力でチャンスをものにする、という形。相模原の狙い。
でもこの後が良かった。アルビはすぐさま同点ゴール。
右サイドをシンプルなワンツーで抜け出した星がクロスを供給。ニアで高澤がつぶれ、ファーに入った谷口が触ってこぼれたボールが、中央走り込んできた福田晃斗の目の前へ。これを冷静に叩き込んで同点弾。
これも、アルビの狙いがしっかりハマったゴールだった。
点を取る型
この日のアルビの狙いは分かりやすくこれ。
右サイドからのクロス。高澤がニアで潰れ、谷口が左からぐいっと入り込んでくる。そういうふうに作り出されたカオスの中、高木や福田がこぼれ球を狙って中央で構える。
後半に入っての逆転ゴールもこの型から生まれた。
今度は右SB藤原のアーリークロスは低くて早い弾道。ニアで頭で合わせに行った、あの高澤の迫力があり、あれがあったから相模原DFは一瞬混乱し、信じて走ってきた谷口がボールを先に触ることができた。
一点目はワンツーで崩して深く入ってのクロス(星)だし、2点目は早めに入れたアーリークロス(藤原)。
相手が前めに来ていたらハーフスペースを攻略し侵入、相手が引いてスペースを埋めてたら早めに中に入れちゃう。これができて、しかも中の準備ができてる(高澤、谷口、福田)、となると、敵はもうどうやって守ったらいいのか、どこを抑えたらいいのかかなり難しくなる。
これは、明確に「点を取るための型」なのだと思う。
ボールを持つことはできている。間で受けてさばく、ということもできている。ハーフスペースの崩し方も共有されている。
でも、最後の最後でどうやってゴールネットを揺らすか、そこがチームとして同じ絵を描いているかどうか、というともしかしたらこれまではちょっと曖昧だったのかもしれない。
だけどこの試合では完ぺきにそれが見えた。
高澤のクロス待ちは、観ている以上に相手DFにプレッシャーをかけられるのだろう。あれだけボールがこぼれるのはたぶん最初に反応する高澤の力だ。
そして谷口の飛び込み、嗅覚。そしてシュートセンス。
今日も再三再四シュートを放ち、危険なところに飛び込み、そしてゴールを決めた。
この人が現段階でもっとも活きる場所は、たぶん今の左ウィングストライカーのポジションだ。1トップの背後から、グワーッと入ってくる、あるいは抜け出すときの迫力がすごい。
このポジションには本間至恩が居るが、谷口の得点力がファーストチョイスになっているのだろう。
迷いがみられたここ数試合のアルビだったけど、ゴールを奪う型がみえたことで、チームの意思がはっきりしていきそう。
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それにしても相模原の19歳成岡選手は今後が楽しみ。なんか柴崎岳にも似てる気がする。
あと青森山田で選手権を沸かせた藤原優大選手も頑張ってた。
岐阜で強烈だった現セルティックの古橋亨梧もそうだけど、J2はこういう未来の大器を感じながら見るのも楽しいのだ。
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