『ポーの話』(いしいしんじ著)という小説に、「メリーゴーランド」と「ひまし油」という兄妹が出てくる。
兄メリーゴーランドは女好きで、いろんな女性と寝て、しかもその家から物を盗む。妹ひまし油はそんな兄を罵り、蔑み、始終わめき散らしている。
僕はこの兄妹が好きだ。

名前の秘密
メリーゴーランドは優しい。人を悪く言わない。とりわけ女性に優しい。どんな女性にも分け隔てなく優しい。妹にももちろん優しい。罵られてもやり返さない。物語の主人公ポーは、「うなぎ女」の子供として生まれ、黒く汚く、普通の人と違ってるが、メリーゴーランドはそれをなんのてらいもなく受け入れる。メリーゴーランドとポーは友だちになる。
メリーゴーランドはポーを自分の住処に連れていき、妹ひまし油に会わせる。
妹に友達を作らせたかったのだ。
ひまし油は兄を罵り、ポーに対しても喚き散らす。
ポーはそれでもここに通い、ひまし油とも次第に仲良くなる。
ポーは、色々な話を聞きながら、この兄妹のことを知っていく。
妹は小さい頃、ミルクの代わりに下剤として使われる「ひまし油」で育てられたため「ひまし油」と名乗っている。
メリーゴーランドの名前にも物哀しい由来がある。
両親とも狂ったような死に方をし、兄妹は逃げるように、社会との間に結界を張るように生きてきた。
兄妹は戦友であり互いの心の奥を覗かせられる唯一無二の存在なのだ。
「罪悪感」と「つぐない」
ひまし油とメリーゴーランドがそれぞれ、ポーに教えることがある。
「罪悪感」と「つぐない」だ。
盗んだもので母たちを喜ばせるポーが感じる嫌な感覚に対して、ひまし油が、それは「罪悪感」だ、と教える。
ポーが「罪悪感」に関してメリーゴーランドに訊ねると、「つぐない」が必要だ、と彼は答える。
「いいか、ひとはな、誰でも貰いっぱのままじゃいられない。金にせよ、恩義にせよ、なにかいただいたなら、それを誰かに返さなくちゃならないときが必ずくる。俺はこれまでの暮らしでそいつを学んだ。簡単にいやあ『つぐない』だな」と言う。
そしてメリーゴーランドは、自分のつぐないのやり方をポーに教える。
ぴゅう。(´ε` )
僕もここで、「つぐない」のやり方をメリーゴーランドに教わることができた。
これからは、罪悪感とつぐないのバランスを、少しはとることができるかもしれない。
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