シェムリアップ

アンコール遺跡群は広い。丸一日散策しても、ぜんぜん足りない。

外国人観光客、遺跡で働く現地の人、物売りの少年少女。そこで思い思いにうごめく人たちを、アンコール・トムの大きな顔がじっと見つめている。

アンコール・トムが好きだ。でかい顔がごんごんごんごんと並んでいる。表情はどれも違う。

そのトムのでかい顔を黙々とスケッチする青年。横から少し見せてもらう。その精緻さに息を呑む。

笑顔がかわいくてよくしゃべる物売りの少年は、ずっと鼻をすすっていた。日本製のよく効く鼻炎薬をあげたかったが、あいにくここには持ってきていなかった。柔らかいティッシュで何度か鼻をかんであげると、嬉しそうに笑った。