第33節「同窓会とレジェンド」

個人的に、いまJ2で一番観たいチームはジュビロ磐田。

なんと言っても、遠藤保仁がいるからね。50番。長年在籍したガンバ大阪から、おそらく出番を求めてやってきた。びっくりした。でもまだまだピッチでみていたい選手だし、ファンとしては僥倖。

数々の歴史が刻まれたヤマハスタジアムでジュビロとの対戦。現在4位、昇格圏内の2位と勝点10差のアルビとしては負けられない試合。

前回は、スペイン人監督対決だったけど力負けした。その時のフベロ監督はもういなくて、今のジュビロは鈴木政一監督。もちろん、サッカーファンの間で語り継がれる「N-BOX」システムで中山、名波、藤田、福西、服部、高原たちを率いてジュビロ黄金期を築いた監督なんだけど、ちょっと前にはアルビレックス新潟でも采配をふるっていた人でもある。なのでアルビファンからすると懐かしい顔。

それから、ボランチの山本康裕とセンターバックの大井健太郎も、以前はビッグスワンで躍動してたプレーヤー。

さながら同窓会。日本サッカーのレジェンドもいて、ファンにはたまらない、見どころが詰まった試合なのであった。

ボールを持たれる

アルビは右SBに入っていた田上が出場停止。

GK藤田。右SBには新井が入って、CBはマウロと舞行龍のコンビ、左SBに早川。ボランチ、島田と中島。福田はケガで離脱。右MFに大本、左に高木。中央にロメロフランク。1トップに矢村。
前節非常に良かった新井とロメロフランクが揃って先発。

ジュビロ側の選手にもワクワクしつつ、昇格を狙うなら絶対勝ちたい！という想いでキックオフを待つ。

うーむ、だけど、今日は全体的にジュビロのゲームだった。

今のアルビにとって、ボールを持たれるということがこんなにしんどいことなのか、と。

今のジュビロは本当にボールを大事にするチームになってる。遠藤効果は間違いないと思う。個人のプレー云々というよりは、遠藤の存在と考え方がチームに及ぼす影響はでかい。11人が「ボールを大事に」「考えて回す、考えて動く」というのを細かく意識するようになる。
鈴木監督もその方向性が間違いなく好きな監督なわけで。

ここ数試合で威力を発揮してたアルビのハイプレスも、ジュビロの選手たちにうまいこと剥がされて、ハマらない。微妙なポジショニング、球離れのタイミング、そういうディティールが、少なくともこの日のジュビロは良かった。

アルビのボール保持率は、今年の中でもワーストだったんじゃないか。かなりボールを持たれ、気持ちよくサッカーされていた。

ただ、最後の最後は割らせなかった。GK藤田和輝。至近距離の反応がめちゃくちゃ良くて、2、3点は救った。キャッチしたら、すぐにカウンターの糸口を探して正確な高速フィードを送るところも現代的で素晴らしかった。

それでもドローに持ち込む

今日のアルビはボールを持たれてリズムを作れなかったので、攻撃のテンポも上がらず。

ちょっとポジションバランスが悪くて、攻撃の考え方が複雑になってしまったのかもしれない。

右MFの大本はワイドで目一杯開いてドリブルを仕掛けるタイプ。左に入った高木は中寄りで間で受けたいタイプ。両サイド、それぞれ異なる考え方で攻めなければならず、そこがうまくリンクしなかった可能性はある。サイドバックもちょっとやりづらそうだった。
（前半、新井のケガによる退場も、混乱を助長した）
トップ下のロメロと1トップの矢村は分断されてあまり近くで仕事することができず。矢村は孤立して少しもったいなかったな…

後半、矢村を鄭大世に代えて、テセとロメロのダブルターゲットとなり、アルビがカウンターのときにまず見るところができた。これで少し思考がシンプルになり、攻撃に鋭さが出たように思う。

で、先制ゴール。ロメロの粘りから鄭大世の左足一閃。我、ストライカーなり！と高らかに謳い上げるゴール。気持ちよかった。

ジュビロは焦ったんじゃないか。ずっと自分たちのペースで来てたのに、こういうことがある。これぞサッカー。

このあとも展開は引き続きジュビロペースだった。

アルビは荻原投入後、5バックみたいな形に。右から早川、マウロ、舞行龍、堀米、荻原を並べ、その前にダブルボランチ。籠城作戦だったのか。こんなのもあるのか…とつぶやきながら見てたが、これに移行するのが早すぎた感がある。

ジュビロは前への圧力を強め、猛攻。アルビも集中して凌いではいたが、終了間際に同点ゴールをねじ込まれた。

まあ仕方ない、今日はジュビロがよかった。遠藤保仁は健在。知的なプレーを堪能させていただいた。