第13節「守備網」
5月9日日曜日、ゴールデンウィークのほんとうの最終日。朝からの雨が止んだビッグスワンで松本山雅を迎えうつ。
地上波BSNでも放送があり、実況アナウンサーが要所要所の絶叫で盛り上げていた。
松本は現在10位。今季序盤は低迷したがこのところ3連勝と好調らしい。もちろん我らがアルビレックス新潟も、愛媛FC、ジェフ千葉、大宮アルディージャに3つ続けて勝ってるわけである。
ノッてるチーム同士の対決というわけだ。
対策万全、続く集中
アルビレックス新潟のスタメン。最近はCBの1枚と右ハーフを入れ替える事が多い。
GK阿部航斗。DF藤原奏哉、舞行龍ジェームズ、千葉和彦、堀米悠斗。MF高宇洋、島田譲、星雄次、高木善朗、本間至恩。FW谷口海斗。
アルビはあまりメンバーを触らず、試合ごとにやり方を変えない。相手は様々な対策を練ってくるが、アルビは、でん、と構えて、意志を貫く。
今日の松本も、充分な対策を練ってきた模様。そしてそれがピッチ上で高いレベルで具現されていた。
松本山雅の基本布陣は3-3-2-2。両サイドは基本的にウィングバックが一枚でみる。当然負担は大きいが、とてつもない運動量をみせ、スピーディな上下動を繰り返す。数年前だと驚異的だったこういう動きだけど、もうこれくらいは今のサッカーの「当たり前」なのかもしれない。
松本の、アルビの高いボール保持率を見越した対策。守備時はそのウィングバックが帰陣して、5枚のDFを並べる。5枚並べると、一人ひとりの守るゾーン幅が減る。アルビ攻撃陣の侵入するスペースがない。その分、中盤は空くはずなんだけど、ここを松本は素早い横スライドで対応した。
松本の中盤より前の守備ブロックは、アンカーが一人いて、その前にシャドー2枚、FW2枚の1-2-2を形成する。このままだと、守れる幅が小さいので、普通は、例えばアルビのサイドバックのところが空いたりする。
だけど松本は空けなかった。松本の2FWはアルビのCBにチェイシング。千葉と舞行龍はそれほど自由にさせてもらえない。その追い方が、しっかりボランチへのコースを消す追い方。後ろの2枚と合わせて高と島田へのルートがうまく消されていた。(たまに高がDFラインまで引いてもらうことはあった)
FWとシャドーの2-2は、プレッシング時の連携がすばらしい。1-3にするときもあれば4枚横並びのときもある。アルビのビルドアップの狙いとボールの流れに応じて形状を変えながら、ボールに対して一定の強度で襲いかかってくる。
で、サイドへ、例えば右SBの藤原が開いてもらおうとすると、松本の前線4枚が塊になってそちらにスーッとスライドする。あっという間にアルビの右サイドで密集が作られ、アルビはそこから効果的な出口を見つけられない。やっとサイドを変えて今度は左サイドから攻めようとすると、そっちにも松本の守備ブロックが移動し、スペースが消される。今日の松本は、この守備ブロックの横スライドがとにかく早かった。
攻守の切り替え(守備時5バックのセット)と横スライド(守備ブロックの移動)、この2つのスピーディさが際立つ松本。これをしっかり準備し、チームに浸透させる監督&スタッフ陣。このスタイルを持続させる集中力。このサッカーを見たら、アルビレックス新潟の苦戦は当然といえば当然と思える。
頭脳戦
5-1-2-2で形成される松本山雅の守備網に、アルビレックスは苦戦した。
松本のもう一つの狙いは、ボール奪取からの早めの裏抜けだろう。ただここは、今日のアルビは徹底的にケアしていた。ボール保持のときのリスクヘッジが常になされていて、奪われた直後に裏を狙う選手には、CBとボランチの高あたりがしっかり睨みを効かせていた。前節の大宮戦の教訓が効いている。
松本の戦略に対して、アルビレックスも引き出しを見せた。前半の終盤、前線の配置を入れ替える。
FWの谷口を左サイドに出して、本間至恩を中央に。本間至恩は前に張らずに、「ゼロトップ」のような形。後ろを重たくして構える松本DF陣のマークをずらすと同時に、本間との1on1をやる気満々でいた松本の右サイドの気勢を削ぐような意味もあったかも。
後半の立ち上がり、松本が2枚替えからペースを掴む。FWの鈴木国友を投入し、千葉と堀米の間あたりでラインぎりぎりの駆け引きをさせる。それがスイッチなのか、松本が全体的に攻勢に出てきた。前半と明らかに違う空気に、アルビも面食らったように見えた。
前半から後半の途中まで、松本はこういうゲームプランを用意していたのではないか。前半の0-0は「アルビに先制させない」という狙いが想定通りハマったもの。そして後半ギアチェンジして勝負をかける、という。
松本のゲームプランがハマっていたとなれば、アルビはやられるんじゃないか、と思うが、そうはならないのが今のアルビである。
ここまでプランを練り上げて集中を持続させる松本に対し、アルビレックス新潟もただ構えるだけでなく、少しずつアレンジしながらゲームを動かしていく。
前半の終わりの配置変更もそうだし、右サイドの三戸舜介投入もそう。典型的なサイドプレーヤーの星雄次から、本間至恩ばりのタッチの細かさで密集地帯に切り込める三戸へのチェンジで、松本5バックの牙城を崩そうという狙い。相手のタイプが変わると守る側も、頭と身体で対応方法を切り替えて適応し直さないといけない。
ただ、選手の配置変更や選手自体の交替には自分たちのリスクも伴う。バランスが崩れより悪くなるときもある。でもアルビはそうならないのが、一番の強みかもしれない。柔軟に、流動的にいろいろ入れ替えても自分たちのバランスはそうそう崩れないし、サッカーの方向性もブレない。
スコアは0-0だったけど、両チームの戦略がぶつかりあう、見ごたえのある頭脳戦だった。
これ相当クオリティ高いです、よね?
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