第29節「頑固な2チーム」
クラモフスキー体制で一気に勝点を積み上げてきた山形との対戦は、個人的にとても楽しみにしていました。内容は予想を裏切らない、スリリングな展開。だけど結果は残念なものに。こういう試合はどっちに転ぶかわからないから… J2で、いい意味で頑固な、スタイルのぶつかり合いを観れたのはありがたかったです。そしてアルビはまだまだ巻き返せるはず。
試合の背景
- ビッグスワン、土曜日18:00キックオフ
- 新潟は3位。ただ、上の2チーム磐田、京都と勝点が開きつつあり、これ以上離されたくない
- 山形は監督が代わって一気に勝点を積み上げた。が、ここ3試合勝ちがなく、順位は8位
試合ダイジェスト
【前半】
立ち上がり、山形が攻勢をかけるが新潟が踏んばり、返す刀で前半10分に先制。DFラインの背後に走り込んだ高木からのクロスを谷口がボレーで合わせる美しいゴール。しかし35分に山形が右サイドを突破、Vアラウージョが合わせ同点弾。両チームいいところを見せ合い、1-1で折り返し。
【後半】
後半、両チーム交代はなし。60分過ぎ、山形に勝ち越しゴール。1点目同様、右サイドの中原から。今度は中にカットインし、細かいパスが繋がって最後は山田康太がループ気味のフィニッシュ。新潟も高澤、星、鈴木などを投入し追いかける体制を作るが、攻めのリズムができない。そのまま1-2で試合終了。
バルサ vs シティ
アルビのスタメンは前節と変更なし。アルベルト監督としては手応えがあったんだろう。
GK阿部航斗。DF藤原奏哉、早川史哉、舞行龍ジェームズ、堀米悠斗。MF高宇洋、福田晃斗、ロメロ・フランク、高木善朗、本間至恩。FW谷口海斗。
たしかに北九州戦、90分を通してゲームを支配していたが、点を取れなかった、という印象のゲームだった。
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モンテディオ山形は、元清水のピーター・クラモフスキー監督を招聘し、一気に調子を上げてきたチーム。
クラモフスキーといえば、ポステコグルーのコーチとして名を馳せた戦術家。ポステコグルーは、横浜FMで超攻撃的スタイルの確立を置土産に、今はスコットランドの名門セルティックで指揮をとる名将。さらに横浜FMは、マンチェスター・シティを筆頭とする世界的な「シティ・フットボール・グループ」の一員で、ポステコグルーの横浜FM入りもセルティック行きも、このグループの力がおおいに働いている。
この華麗なる系譜。その思想が息づくサッカーを、ここJ2の舞台でモンテディオ山形は体現してくれている。
とはいえ、いまのアルビレックス新潟だって、源流はスペイン・バルセロナにある。そう、我らがアルベルト監督は、元はバルサのアカデミーコーチ、ダイレクターなのだ。
これは、仮想バルサ vs シティといっても差し支えないんじゃないのか。
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というわけで、この試合個人的にかなり楽しみにしてきた。そして実際にそういう内容のサッカーが展開される。
どちらも、いやー、頑固頑固。どれだけ前からプレスをかけられたって、後ろからつなぐつなぐ。狭いところを通すし、ちょっとでも空いてたら、縦パスを前につける。GKからボランチへ。サイドバックから降りてきたFWへ。
サイドバックは例によって中寄りでもプレーするし、状況に応じて開いて幅もとる。
効果的にボールを保持し、相手のDFラインを拡げるには、誰かがタッチラインいっぱいに開いて幅をとらないといけない。これはある種の鉄則。だけど、このポジションの人がかならず開いていないといけない、という決まりはない。誰がとってもいいのだ。サイドハーフがとってもいいし、サイドバックでもいい。流れてきたFWでもいい。
ボールを保持するために、選手が自分たちで考え、いろんなポジションをとる。
それはボールを失った時、そのままリスクとなる。リスクを最小限にするには、ポジションはずらさないほうがいいし、あまり開かないほうがいいし、難しいパスは通さないほうがいい。
でもこの両チームはほんとに頑固。お互いに、自分たちのスタイルを変えない。
日本のバルサ vs シティ。プライドのぶつかり合いを、ちゃんと観せてくれた。
スタイルを貫く
アルビの先制ゴールは、とても理想的な形で生まれた。
ここ数試合うまくいっていない山形はおそらく、この試合へのモチベーションが相当高くて、それが立ち上がりの一気呵成な感じによく表れていた。でもアルビはそこをふんばる。
もともとこの試合は、ボールポゼッション合戦。どちらが気持ちよくボールを回せるか、という勝負になることは明白だったのだが、あくまでスタイルを貫く山形に対して、アルビの方は少しだけ柔軟に構えている印象。
ボールは大事にするんだけど、目指すのはゴール。高いラインを敷く山形の背後に広大なスペースが生まれるのは必然なのだから、そこが開いてたら躊躇せず狙おうよ、と。
で、前半10分。センターバックとして2試合連続スタメンの早川史哉から、前方のスペースへロングパス、走り込んだ高木がなんとかトラップを決めて、右足クロス。そしてゴール前で谷口が、いつもながら抜群の嗅覚と得点感覚で、相手の一歩前で教科書どおりのボレーシュートを叩き込んだ。
山形は落胆したことだろう。ホームのアルビは沸いた。一気にいくか、とも思った。
でもそう単純な話ではなかった。
今度は山形がふんばった。ふんばり、そしてあくまでスタイルを貫いた。
もちろんアルビもつなぎにいく。真っ向勝負。ボール保持率も五分五分。お互いに前線からのプレスを剥がし、剥がされ。互いの練度が試される展開に。
そして山形の同点ゴールは、これもビューティフルなもの。右サイド中原の突破、そして振りのコンパクトなやわらかクロスもきれいだったし、ニアで早川を抑え込みながら合わせたヴィニシウス・アラウージョのシュートも秀逸だった。
このまま、両者の築いたスタイルでの攻防、意地の張り合いが続く。
試合内容は本当に見ごたえがあった。
リスクを背負いながらボールを保持する。後ろの選手が前の選手をダイナミックに追い越していく。後ろに残す枚数は最小限。ボールを奪われたらその場ですぐ取り返しに行く。
でもその頑固さで、今回は山形が少し上回っていたのかもしれない。
山形の2点目、これが決勝点になったのだが、右サイド中原のカットインから始まった攻撃は、バイタルエリアで複数の選手が絡み、走り込んできた山田康太が決めきった。
アルビが固めていた中央の牙城を、ほんとに細かいパスワークとイメージの共有で、こじ開けられた。これは、精神的にも大きなダメージだったように思う。パワーでねじ伏せられたわけでもなく、カウンター一発でやられたわけでもない。ほんとはうちがやりたいことを、やられてしまった感は、確かにあった。
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でもアルビの出来も悪かったわけではない。
例えば高と福田のボランチコンビの役割分担ははっきりしてきていて、それぞれ確信を持ってプレーを選択できている気がする。谷口は相変わらずゴールの匂いがプンプンするし、最近疲れ気味に見えた高木もこの日はほんとによくボールを引き出して起点になっていた。
でもまあ、今日はクラモフスキーの山形に軍配。敵ながらあっぱれなサッカーだった。
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アルビ、まだまだ3位ですよ。ここから巻き返しましょう。
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