小さな庭を、「小庭」と呼ぶことにしよう。「こにわ」と読むと「はにわ」みたいでかわいいから。
「じゃあ、大きな庭はなんて呼ぶの?」美鈴が言った。
愚かな美鈴。大きい庭は、単に「庭」でいいのだ。更に大きい庭は、それはもう公園だ。
小庭を愛でる事ができるのは、わび・さびの文化を解する日本人の特権かもしれない。例えば南太平洋に浮かぶ島々に小庭は似合わない。スカンジナビア半島に、小庭はあるだろうか。想像できない。
「スカンジナビア半島って、すごく寒いんだろうね」美鈴が言った。
またしても愚かな美鈴。スカンジナビア半島なんて、暑いに決まってる。アラビア半島やインドシナ半島が暑いのに、「スカンジナビア」とかいう熱を帯びた名前の半島が寒いわけあるか。
● ● ●
愚かな美鈴は成長し、「株式会社パーク&エコロジー」という会社の社長になった。小庭のわび・さびを解さない美鈴にはちょうどいいポストかもしれない。「都市に緑を」をコンセプトに、いろんな所を開発してるらしい。愚の骨頂だが、美鈴らしい。
私は美鈴が居る大きなガラス張りのビルを見上げながら、小庭にテントを張って暮らしている。念願叶ったり。毎朝焚き火をしてお湯を沸かし、ブリキのカップに珈琲を注いで飲む時間が最高。
ところで、美鈴って、スナックのママにぴったりの名前だよな。明美(あけみ)とか美里(みさと)と同じくらい。
私は私の小庭からビルを見上げ、美鈴の愚かさを愛し、美鈴の成功を願っている。
よろしければどうかご感想を!
※コメントは、サイト管理者による承認後、ページに表示されます。